読書感想150 ベルリン1919

読書感想150 ベルリン1919
著者 クラウス・コルドン
略歴 1943年ベルリン生まれ。東ドイツの貿易商人として世界中を
巡る。1968年に東ドイツから西側への逃亡に失敗、拘留され
る。1977年に作家としてデビュー。児童文学作家として国内
外で多くの賞を受賞。
出版年 1984年
邦訳出版年月 2006年2月
★感想★
本書はクラウス・コルドンのベルリン三部作(ベルリン1919、ベルリン1933、ベルリン1945)の第一作である。舞台はベルリンで、主人公は貧しい地区に住む13歳の少年ヘルムート・ゲープハルト(愛称ヘレ)。この少年ヘレが見たドイツの11月革命の顛末である。
ヘレ少年は工場で働くお母さんと5歳の妹マルタと赤ちゃんの弟ハンス坊やと暮らしている。1918年の冬の食糧も満足に手に入らない戦時下のベルリン。そこに戦地からお父さんが帰ってくる。お父さんは右腕を失って除隊したのだ。お父さんはしばらく働かないで戦争継続中止の活動をするという。そうこうするうちにキール軍港で水兵が反乱を起こしたという情報が伝わってくる。そしてキール軍港の水兵達はベルリンに向かってくる。6日後の11月9日に皇帝ヴィルヘルム2世が退位し、ベルリンの中心部は大勢のデモ隊で埋まる。そこでヘレ少年は水兵達と知り合い仲良くなり、二つの共和国宣言を聞くことになる。帝国議会議事堂の前では戦争協力してきた社会民主党のシャイデマンが帝政から権力を委譲された「ドイツ共和国」の樹立を宣言する。一方王宮前では戦争反対で拘留されていたスパルタクス団のカール・リープクネヒトが演説し「自由社会主義ドイツ共和国の誕生」を宣言する。同じころ、ヘレ少年の住む共同住宅の屋根裏部屋に間借りしているナウケ青年は革命に反対する将校達に銃撃されて死亡する。ナウケ青年はスパルタクス団の一員でヘレ少年を使って秘密の連絡や武器の運搬をしていた。ヘレ少年はその後もスパルタクス団の連絡役を頼まれ、1919年1月の政府軍によるキール軍港の水兵の鎮圧やスパルタクス団を支持する労働者の武装蜂起が失敗し、殺されていく現場に立ち会うことになる。
著者の解説によれば、1月15日にはカール・リープクネヒトとローザ・ルクセンブルクが暗殺され、「自由社会主義ドイツ共和国」の夢は大きく頓挫し、
1918年11月から1919年1月までの間に政府側の部隊と交戦して亡くなった水兵や労働者は数百人に上ったと言う。更に将軍達と社会民主党の幹部が社会主義革命阻止のために設立した義勇軍との戦いで数千人の犠牲者が出たとか。
革命は人々の間に亀裂を生み、対立を深めていく。水兵の農民の父親は息子の反逆に怒り、ヘレ少年の周りの人々も皇帝支持者、社会民主党支持者、スパルタクス団支持者と割れている。ヘレ少年の学校でも革命を支持する先生は、スパルタクス団が一掃されると、学校を追われる。
子供の目を通して11月革命の高揚感と挫折が臨場感あふれて描写されている。
戦争継続反対で一致していても、国家のあり方については分裂している。国家のあり方について大多数が一致しないと、社会主義革命の成就はむずかしいだろう。武装蜂起で権力を握るという方針を出しても、軍隊の大半が反革命に握られていては始めから勝ち目はない。スパルタクス団の痛ましさと同時に無能さ無謀さも感じる。社会民主党の裏切りとドイツ共産党(スパルタクス団)の無能さが労働者階級に与えた幻滅は大きかっただろう。
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