読書感想154  ベルリン1945

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読書感想154  ベルリン1945

著者      クラウス・コルドン

生年      1943年

出身地     ドイツのベルリン

邦訳作品    「ケストナー ナチスに抵抗し続けた作家」

        「モンスーン あるいは白いトラ」

出版年     1993年

邦訳出版年   2007年

出版社     (株)理論社

訳者      酒寄進一

 

★感想★

本書は「転換期三部作」の第3作目にあたる。時期は第二次世界大戦末期の1945年2月からドイツ無条件降伏した後の6月まで。始めは英米軍による空襲、次にソ連軍との市街戦、最後はソ連軍占領下のベルリンの姿が描かれている。登場人物も多彩で、ゲープハルト一家に、同じアパートに住む人々、ナチの地区責任者になったかつての突撃隊員、ソ連軍の少佐や、ソ連軍と共に帰ってきた亡命したドイツ共産党員、地下に隠れていた逃亡兵やユダヤ人、戦災孤児のグループ、強制収容所から戻ってきた人など。

本書の主人公はエンネ・ゲープハルト。12歳のエンネは同じアパートに住むナチ党員のザウアーにKZ娘と言われた。それは強制収容所の略語だった。両親のルディとマリーに尋ねると、二人は実はお祖父さんとお祖母さんで、エンネの本当のお母さんは亡くなり、お父さんのヘレは強制収容所にいると話してくれた。そしてお祖母さんは3人の息子の話をした。ヘレとハンスとハインツ。ハンス叔父さんはエンネの幼い頃に亡くなり、ハインツ叔父さんは軍隊に行っている。そんなある日、幼い子供を連れた女の人が訪ねてくる。マルタと名乗るその女の人はエンネの叔母さんだという。エンネは叔母さんがいることを始めて知った。マルタ叔母さんは空襲で焼け出されて来たのだが、お祖母さんに追い返された。エンネたちは連日の激しい空襲でアパートの人たちと一緒に地下室に避難した。空襲警報が解除されてエンネたちが部屋に戻ると、「9時、10時、11時。スポーツパレス」というメモがテーブルの上に載っている。誰かが空襲のさなかにメモを置いていったのだ。メモを見たお祖父さんが出かけると、エンネも自転車に乗って後をつけた。いつも真実からのけ者にされるのは我慢できないと思ったからだ。

 日本では地上戦は沖縄で戦われて悲惨な結末を迎えたが、東京は地上戦の舞台にならなかった。一方ベルリンは英米軍の空襲で壊滅的に破壊された上に、更にソ連軍に降伏することを許されず、市街戦を強いられた。ソ連軍兵士の凌辱と略奪もすさまじい。満州から引き揚げてきた人たちから聞いた同じような話を思い出した。またスターリンによって亡命したドイツ共産党員の多数がソ連の強制収容所に送り込まれ粛清され、かろうじて生き残ってソ連軍とともに帰国したドイツ共産党員は自由な社会主義ではなく、スターリンの独裁的な社会主義建設の走狗になっていった。そうしたことから今日、ヒトラーによって殺された共産主義者の抵抗家に敬意が払われていない点について、著者は「あとがき」の中で次のように述べている。

 

20,30年代に公正な社会を夢見て、ソビエト連邦での圧政の報道はナチのプロパガンダだと考えざるをえなかったドイツ共産主義者に、ソビエト連邦で本当に起こっていることを知るすべがあったでしょうか? 祖国ドイツに残った共産主義者は国内でおこなわれる不正に対して立ち上がり、多くの社会民主主義者やキリスト教徒と同様に抵抗運動に決定的な役割を果たしました。彼らの多くはのちにスターリン主義化したドイツ民主共和国で犯罪者扱いされ、新たにできた不当な社会システムのもとで苦渋をなめ、抵抗して、ふたたび迫害された人もいます。

 

 著者はユダヤ人についても「あとがき」の中で述べている。1929年にベルリンにいたユダヤ人は18万人。そのうち12万人がドイツを去り、残る5万人が逃げ遅れ強制収容所に送り込まれ、生還者は1900人ほど。4700人は「特権階級」(ユダヤ人とアーリア人の混血児)として生きのび、5000人が潜伏した。潜伏したユダヤ人のうち空襲や密告、発見を免れて生きのびたのは1400人で、彼らは他人のために自分の命を危険にさらした人々に助けられたという。

 日本よりはるかに苦難に満ちた戦前戦後を歩んだドイツが統一を果たしたというのは、この100年の歴史の中でも特筆に値する慶事だったであろう。

 本書ではあまり知られていないナチ時代や戦争直後のベルリンで生きている人々の息吹が伝わってくる。ナチに抵抗したり、ユダヤ人を助けた人々も出てきて、ドイツの多面性も未来も信じることの出来る物語になっている。

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