読書感想88   未帰還兵―62年目の証言

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読書感想89   未帰還兵―62年目の証言<o:p></o:p>

 

著者      将口泰浩<o:p></o:p>

 

生年      1963年<o:p></o:p>

 

出身地     福岡県<o:p></o:p>

 

出版年     2008年<o:p></o:p>

 

出版社     (株)産経新聞出版<o:p></o:p>

 

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感想<o:p></o:p>

 

 「第二次世界大戦博物館」というものがタイとミャンマーの国境近くの山奥の小さな村クンユアムにある。そこにはおびただしい数の日本兵の遺品が展示してある。お守り、補修した軍服、鉄帽、銃、銃剣、工具、飯盒等々。インパール作戦(インドのアッサム地方のインパールを攻略しようとした)を含めたビルマ戦線では31万人の日本兵が動員され、戦死者は19万人を数えた。インパールからビルマを抜け友好国タイに逃げる道は日本兵の死体で埋め尽くされ「白骨街道」と呼ばれた。倒れた兵隊に対して追い越して行く兵隊は「追及してこい」と声をかけて先を急いだと言う。インパールから逃げてきた日本兵は瀕死状態だった。そして国境の山岳地帯にたどりついた日本兵に村人が米や野菜を分け与え、自分の家に宿泊させた。そのお礼に価値のなくなった軍票の代わりに置いていったものが鉄帽であり、オーバー、守り刀だった。それを村の人々は大事にした。クンユアムの警察署長になったチューチャイが山岳民族の家に日本兵の遺品が飾ってあるのを見て、集めて上記の博物館を作ったのだ。<o:p></o:p>

 

 著者は産経新聞の記者でタイのチュラロンコン大学に半年ほど留学していた。その時に「第二次世界大戦博物館」のことについて知ったのだ。そして「ビルマの竪琴」の水島上等兵のように日本に帰国しなかった日本兵の生きた証を探そうとした。そしてタイのミャンマーとの国境地帯に住む三人の残留日本兵に会うことができた。<o:p></o:p>

 

衛生兵だった中野弥一郎、工兵だった坂井勇、第18師団(菊兵団)の生き残り、藤田松吉。3人ともインパール作戦からの生き残りで、敗戦後収容所から脱走したり、日本軍とはぐれてしまったりして帰国せずに、現地の女性と結婚した。3人共に経済的に成功している。藤田松吉は原野を開拓して果樹園を作るかたわら、日本兵の遺骨の収集にあたり、800体の遺骨を収集して自宅前に慰霊塔「噫忠烈戦没勇士の慰霊塔」を建立し、遺骨を納めている。<o:p></o:p>

 

―藤田は帰国した際に靖国神社に参拝している。<o:p></o:p>

 

「あそこにはおらん。帰ってない。魂は死んだ所に残るもんじゃ。タイで死んだらタイ、ビルマで死んだら、ビルマの山の中に残っとる。日本には帰っりゃせん。だれかが残って供養せんといかん。わししかおらんやろ」-<o:p></o:p>

 

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 インパール作戦(10万人出兵、戦死3万人、戦傷病者4万5千人)は、制空権を奪われ最初から補給が十分にできず、山岳地帯を重装備の徒歩で行軍するという、勝算の見込みが少ないということがわかっていながら、決行された。負け戦を認めず、だらだら引き延ばすだけの戦争をして傷口を広げてきた日本軍の典型的な愚劣な作戦だ。負けを認めないためにしなくてもいい戦いが、沖縄でも硫黄島でもサイパンでも行われて多くの人命が失われた。沖縄でも硫黄島でも軍司令官はみな自決したり、戦死したり責任をとっている。しかしインパール作戦の責任者第15軍司令官牟田口廉也中将は生き延びている。戦後も20年ほど生存して天寿を全うしている。指揮命令の最高決定権があった大本営も責任は問われていない。戦争責任の問題は戦勝国が敗戦国を裁く東京裁判で決着がつく問題ではない。愚劣な戦争を興し、犠牲を最小限に留めなかった当時の政府や軍が国民に対して取るべき問題だ。こういうめちゃくちゃな政府や軍に国民は命を預けることができないからだ。対照的に思うのは徳川慶喜のことだ。鳥羽伏見の戦いは徳川慶喜の戦略的な甘さによる敗戦だっただろう。しかし、その後恭順ということで戦争を止めたことは英断だと思う。ずるずる負け戦を引き延ばして犠牲者を増やさなかったことは、第二次世界大戦時の責任者の不在のような戦争のやり方と比較すると、負け方が上手といえる。戦争を開始するときに勝つことだけ想定し、負けることを想定しないというのは、どうかしている。こういう指導者が権力の中枢にいるという異常な体制が、68年前に存在していたのかと思うと戦慄する。今の日本の政府の機構は戦前の教訓を生かしているのだろうか。日本が普通の国になるにあたって一番心配な点だ。

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