読書感想231 回廊封鎖

読書感想231 回廊封鎖
著者 佐々木譲
生年 1950年
出版年 2012年
出版社 (株)集英社
☆感想☆☆
プロローグは老夫婦が列車に飛び込む自殺のシーンから始まる。次の場面では電車の前に突き落とされた他殺体の現場。そして高層集合住宅の屋上からぶら下げられていた死体。二つの他殺体の共通項は同じ紅鶴というサラ金にかつて勤めていたこと。紅鶴という悪名高い消費者金融は既に清算されていて現在は存在していない。借りた人は多重債務者となりほとんど自己破産に追い込まれ家庭も崩壊し、さらに自殺した者も出た。紅鶴は高利の貸付で暴利をむさぼり、その利益のほとんどを海外の創業者の息子と娘の会社に移した。貸金業対策法の一部が改正施行された後、大量の過払い利息返還訴訟を受けて破綻した。創業者も亡くなった。しかし、紅鶴には資金が残っておらず、被害者が過払い分の返還訴訟を起こしてもお金が戻ってくることはなかった。警察は、二つの殺人事件と紅鶴の関係に焦点を絞る。一方、創業者の長男は紅鶴の巨額の資金で香港の映画産業に投資して成功を収めていた。その創業者の長男の愛人の女優の映画が、東京の映画祭で上映されることになる。
時代劇で言えば天誅を下すというのが犯人グループの動機だし、復讐できれば死んでもいいという常軌を逸した感覚、つまり狂気がもっと描かれると、リアリティが出たかなと思う。性格もよくまともな生活をおくっている彼らからは狂気があまり感じられない。同情の余地がないのは殺される方で、殺す方はそこまで思い詰めたうえに殺しの代償も支払っているので同情してしまう。犯罪に手を染めたことで彼らがどんどんすごみが出てくるはずで、犯罪小説としてそれが見たかった。
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